2026.08.18
金型のメンテナンスと長寿命化|100万ショットを支える保全
射出成形の量産を安定して続けるには、金型を「作って終わり」にせず、適切に保全し続けることが欠かせません。メンテナンスを怠ると、摩耗・かじり・錆・ガス焼けなどで成形不良が増え、金型そのものの寿命も縮みます。逆に、計画的な保全と長寿命化の工夫を重ねれば、100万ショット級の量産を安定して支えられます。本記事では、金型のメンテナンスの基本と、長寿命化のための設計・運用の工夫を、金型メーカーの視点で解説します。
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なぜ金型メンテナンスが必要か
金型は、ショットを重ねるほど少しずつ摩耗・劣化します。代表的なトラブルには、バリ、かじり、ピンホール、シボ(表面模様)の損傷、錆・腐食、ガス抜き不良などがあります。これらは成形品の品質低下を招くだけでなく、放置すると金型の寿命そのものを縮めます。
金型の寿命はショット数で管理するのが一般的です。保証ショット数は金型構造・成形材料・成形条件によって大きく変わり、海外製の金型では約30万ショットを目安に設定されることもあります。一方で、適切な保全を続ければ寿命を大きく延ばせるという考え方が、量産金型の保全の基本にあります。
日常メンテナンスと定期メンテナンス

金型のメンテナンスは、毎回の生産で行う「日常メンテナンス」と、一定のショット数・期間ごとに行う「定期メンテナンス(オーバーホール)」の2層で考えます。
日常メンテナンス(成形後)
- エアブローやウエスで金属粉・スケールなどの異物を除去する
- 金型洗浄剤で、離型剤の焼き付き・炭化物・油汚れを拭き取る
- パーティング面や摺動部の傷・打痕・かじり・摩耗を目視で確認する
- スプル・ゲート・エジェクタ周りのガスや離型剤の付着を確認する
- 防錆剤を塗布して保管する
定期メンテナンス(オーバーホール)
- 金型を分解して、普段見えない内部部品の摩耗・金属疲労を点検する
- 摺動部(ガイドピン・ブロック)を点検し、グリスアップする
- 入れ子・コア・ピンの摩耗や寸法を点検する
- ガス抜き(ベント)の詰まりを清掃する
- 冷却水路の詰まり・錆を確認し、洗浄する
- Oリング・ガイドピン/ブッシュ・ボルトなどの消耗部品を交換する
とくに冷却水路の詰まりや錆は金型温度の管理に影響し、成形品の品質や生産性を下げる原因になるため、オーバーホール時の重要な確認項目です。
「壊れてから直す」を避ける予防保全
保全の考え方には、ショット数や期間を基準に計画的に手を入れる予防保全と、壊れてから直す事後保全があります。事後保全は突発的で計画が立てづらく、緊急対応費とライン停止(ダウンタイム)の損失が膨らみがちです。量産では、予防保全を基本にするのが安定稼働の近道です。
さらに、メンテナンスの履歴を記録・分析することで、最適なメンテナンス周期の見極めや、トラブルの真因究明、将来の不具合の予測(予知保全)につながります。摺動部のトラブルは潤滑不良や異物の噛み込みが主因となるため、点検記録と給脂の管理が効果的です。
長寿命化のための設計・運用の工夫
金型を長く使うには、メンテナンスだけでなく、設計・運用の段階での工夫も効きます。代表的な打ち手を整理します。
| 打ち手 | 内容 | 主な効果 |
|---|---|---|
| 鋼材選定 | 耐摩耗・耐食に優れた鋼材を選ぶ | 摩耗・錆を抑え点検間隔を延ばす |
| 窒化処理 | 表面に硬化層を形成 | 耐摩耗性の向上 |
| クロムめっき | 高い表面硬度と耐食性 | 耐食・離型性の向上 |
| DLCコーティング | 低摩擦・高硬度の被膜 | 離型性・耐摩耗性の両立 |
| 冷却・摺動部設計 | 水路と摺動部を適切に設計 | 詰まり・摩耗の予防 |
表面処理は摩耗や腐食を抑えるだけでなく、樹脂のガス成分や添加剤が金型表面に付着しにくくなり、清掃の頻度を減らして稼働率を高める効果も期待できます。鋼材選定の考え方は金型用鋼材の選び方もあわせてご覧ください。
金型を「成形屋と併走」して支える
金型は、納品してからが本当の付き合いの始まりです。当社(株式会社三幸)は、100万ショット以上の生産に対応する高耐久な金型設計を基本とし、金型納品後も成形メーカー(成形屋)と併走するスタンスで長期の量産を支えています。メンテナンス時の点検ポイントや消耗部品の在庫を一緒に整理し、定期メンテナンスを前提とした長期安定稼働をご提案します。
既存金型の改修・メンテナンス・長寿命化のご相談も承っています。金型製作の詳細は金型製作のページ、設備は設備一覧をご覧ください。
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金型のメンテナンス・改修・長寿命化のことなら、株式会社三幸にお任せください。
既存金型の点検・改修から長期量産のサポートまで、内容にもよりますがまずはご相談を承っています。お問い合わせフォーム →
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この記事の監修者
営業技術部 部長 岡鼻
株式会社三幸にて金型設計に18年従事。射出成形技能士2級。化粧品・医薬品・食品分野のキャップ・容器を中心に、量産金型の設計・製作と、納品後の長期サポートに長年取り組んできた。
参考文献
- 日本塑性加工学会 編『プラスチックの成形加工』コロナ社
- JIS B 0700「プラスチック金型用語」日本規格協会
- 株式会社三幸「製作実績」